「Chapter01 「メモのとり方」を知れば、大作が自然に書ける」を読む
英語版:Everything You Need to Know
Chapter 01 「メモのとり方」を知れば大作が自然に書ける
メモをとれば、偉大なアウトプットができる
「計画」を立ててしまうことが、やる気を失わせている
計画を立てると、 学び続ける持久力を失う
優秀な人ほど、新しいアイデアを生むのに苦労する理由
優秀な人は、そもそも他人より扱う情報が多い
メモ術はシンプルなものがいちばん
新しいメモのとり方を習慣にしよう
文章を完成させるために必要な「タスク」をあらかじめ出すのは不可能
メモのとり方を発明して、最高の研究者になった人物の話
あらゆるジャンルの、あらゆる情報を駆使した本も書ける
メモの力で、大量の本を苦もなく執筆できる
ツェッテルカステンは、刻々と変わる「自分が興味のあるテーマ」にも対応する
さあ、メモを始めよう!
「メモに番号を振る」ことでアイデア同士がつながる
メモ同士にリンクを貼ることが画期的
メモの取り方とアウトプット
これまでメモのとり方は、そのアウトプット(利用方法)とは無関係に教えられてきた。本書はそれを変えようと思う。
rashita.icon著者は、この本を通じて、アウトプットと関係したメモのとり方を提示しようとしている、ということ。
ルーマンはたくさんの著作を世に出したので、たくさんの著作を世に出すというアウトプットと関係あるメモの取り方、ということになる。
それ以上に、ルーマンが「やりたくないことをやるために自分を追い込んだことは一切ありません。行き詰まったら他のことをやります」と述べていたことを著者はより強く伝えたいと思っている。
rashita.iconこの発言のソースは示されていない?
rashita.icon逆に言えば、「やりたい」という気持ちはないがやらなければいけない課題をこなすための方法ではない、ということ。
すぐれた構造は信頼できる
rashita.icon急に話が飛んだ
すぐれた構造をつくっておくと、予定全体をおびやかしたり、全体像を見失ったりせず、ひとつのタスクから別のタスクにスムーズに移行できるから
rashita.iconそのように移行できるから、信頼できるということだろうか。
それ(すぐれた構造?)があれば、あらゆることを記憶し、状況を把握するための負担が軽くなる
枠組みを信頼できれば、何もかもを頭の中でまとめようとしなくてすむ。
それ以外の重要な行為、内容・主張・アイデアに集中できる。
rashita.icon「すぐれた構造」とは何なんなのか。ここでいう「枠組み」は何を指しているのか。
文章を書くというアウトプット(これはメモしたものの用途として設定されている)はとらえどころのない課題だが、それを小さくはっきりわかれた作業に分割することで、「一度にひとつの作業に集中し、一気に完成させて、次に移ることができるように」なる。
rashita.iconこの「完成」というのは、文章を書くというアウトプットのことなのか、小さく分かれた作業のことなのか。
「完成」という言い方だとどちらなのかが曖昧
優れた構造をつくると、集中することもできる
作業に完全に没頭できると、時間の感覚を忘れ、苦労を感じずにそのまま作業が続けられる
rashita.icon上の話と重複しているのではないか。
いわゆるフロー状態のことだろう。
GTDでは水のような心
rashita.iconなんとなくわかるが、「すぐれた構造」や「枠組み」が意味するところが曖昧なので、いかようにも解釈できてしまう。
分割された作業手順の話なのか、情報の意味的な関係の話なのか
計画とやる気
やる気を失わせるのは、採用している作業手順のせい
使いやすいメモ術を採用すれば、コントロールを取り戻し、適切な作業を適切なタイミングで行える自由度を上げることができる
rashita.iconこれも結構漠然としている
枠組みを作ってそのなかで仕事をすることと、仕事をするための計画を立てることは違う
計画に従って作業を進めようとすると、自分をせきたて、意志の力でどうにかするしかありません
rashita.icon本当だろうか。著者の主張を借りるならば、計画に従えるような環境をセットアップすればいいのではないか
しかしこのやり方は、やる気をそいでしまうだけではなく、思考やアイデア出し、研究、あるいは学び一般といった、時間や目的に制限のないプロセスには不向きです。
rashita.iconこれはその通り。しかし、仕事や学術的研究では時間や目的に制限のあることが多いだろう。そして、それらは「やる気」を削いでしまうからこそ、方法・ノウハウが切実に要請される。時間や目的に制限のないプロセスでは、極論どうやっても構わない、とは言える。
また、計画があるとし新しい洞察や理解を得たり、業績が達成されたりするたびに、それに合わせて次のステップを調整する必要も出てきます。
rashita.iconその何がいけないのか。
リーン・アジャイル系ではそれを織り込んで、柔軟な計画を進めていこうという話になっている。
Re:visionでも現実の結果を取り込んで、理想や計画や展望を際描写しようという話になっている。
問題は硬直的な計画であって、柔軟な計画ではない
計画することは、研究や学習の発想そのものと対立するにもかかわらず、書き方を指南する本や自己啓発書の中心的なテーマにすらなっています。
rashita.iconまずその二つが対立するというのは本当か。
というか、ここでいう「計画」するが、ちょっと頭で考えたものをリストにしただけ、という話ではないか。
個人的には「計画」という観念こそ再検討が必要だと思う。
rashita.icon一方で、たしかに最初に思った通りに執筆が進まない、というのは現実の話としてある。だからといって、「計画すること」というコンセプトをまるっと破棄するのは大雑把な手つきに思える。
計画がなければ、手当たり次第だらだらやるしかない、という考えは誤解
rashita.iconこれはたしかにそう。しかしそれは計画があったら、絶対に破綻するというのも誤解ではないか。
洞察や、新たなアイデアを生み出すためにできるようなワークフローをまず構築することに、鍵があります。
rashita.iconそうしたワークフローの構築は「計画」できるのだろうか。
事前に立てた計画にこだわるあまり、予想外のアイデア、発見、洞察の芽をつみとってしまったら台なしです。
rashita.iconこれはその通り。で、やはり問題は計画を立てることではなく、「立てた計画にこだわること」=硬直性だろう。
計画を立てると、 学び続ける持久力を失う
残念ながら、大学でさえも、学生にただ計画を立てさせます。
rashita.iconポイントは「ただ計画」というところだろう。
計画は、ただ立てただけでうまくいくものではない。
計画にこだわって無理にやり通せば、試験には合格できます
rashita.icon本当に?
でも、それでは学ぶこと、書くこと、あるいはメモをとることの専門家にはなれません。
rashita.icon日本の大学生の多くはそういう専門家になりたいとは思っていないだろう。
特に「メモを取ることの専門家」になりたいという欲求はどうなのか。
また、計画を立てるだけの人は、試験が終わったあとも学びつづけることがあまりありません。
rashita.iconここでもやはり「計画を立てるだけ」というのがポイント。
それは適切な計画の「使い方」ではない。
しかし、やりがいがあっておもしろいとわかっている仕事をやめるなど考えもしない人もいます。それが専門家です。本書を手に取ってくれた読者の皆さんはおそらく、計画を立てるだけの人で終わらず、専門家になりたいと思っているでしょう。
rashita.iconある時代までの日本の会社員は自分がやりたいことを仕事にするという発想ではなかったので、仕事術の多くは「特にやりたいわけではないけども、それをこなす」(≒効率的に)というニーズを満たすものだったのだろう。
でもって、そういう職場で働いている人には、本書のノウハウは基本的に役立たないということになる。
言い換えれば、本書は自分が興味を持つ対象の専門家になりたい人向けのノウハウ、ということ。
知的探求(倉下の用語では、Knowledge Walk)のためのノウハウ
rashita.icon「計画を立てるだけの人で終わろう!」と思う人はほとんどいないはずなので、やや誘導的な文ではある。
優秀な人ほど、新しいアイデアを生むのに苦労する理由
いちばん苦しむのはだいたい優秀な人
優秀な人は、最高の表現を見つけようとする
rashita.icon優秀な人というのは、能力がある人、くらいの意味だろうか
それとも、自分が優秀であるという自覚がある人という感じだろうか
優秀でない人も最高の表現を見つけようとして苦労する気がするがどうか。
だから文章を書くのに苦しむ
テーマを見つけるのも苦労する
最初に思いついたことはそんなに素晴らしいものではなく、すぐれた問いは待っていても降ってこないと経験で知っているから
たくさんの情報を収集し、格闘する情報量も増える
たくさん読んでも、アイデアが増えるとは限らない
最初のうちは、調べれば調べるほど、逆に取り組むアイデアがかえって少なくなる
ほとんどのアイデアは他の人がとっくに調べてしまっているとわかるから
すぐれた書き手は、「当たり前」のその先を見通そうとする
限界を乗り越えようとする
他の人のようなやり方はできない
どのようにかみ合うかわからない複数の異質なアイデアにマニュアルなしで対応しなければならくとも、いばらの道をいく
rashita.iconこの段落、「優秀な人ほど、新しいアイデアを生むのに苦労する理由」の説明として機能しているだろうか?
優秀でない人は、新しいアイデアを生むのが楽なのか?
優秀な人は、そもそも他人より扱う情報が多い
上記のような状況に置かれる人にとって、増え続ける情報を記録するためのシステムが必要
そのシステムによって、結びつけ、新しいアイデアを生み出すことができる
rashita.icon増え続ける情報を記録するためのシステムであれば、どんなものでも「結びつけ、新しいアイデアを生み出す」ことができるのか、それとも特定の要件を満たす、「増え続ける情報を記録するためのシステム」なのか。
優秀でない人には、こうした問題は起こらない
自分の能力の範囲にとどまり、いわれた参考書だけを読んでいれば(あるいはそれすら読まなければ)、外部のシステムを使う必要はありませんし、いつもの「文章の書き方」に従えば文章が書けます。
rashita.iconたいへん暴論なように思える。
原文(英語版のことです)を確認してみる。
Good students also look beyond the obvious. They peek over the fences of their own
Poor students do not have any of these problems.
「優れた学生」「劣った学生」なのに、なぜか「人物」という範囲の広い言葉になっている。
意訳の範囲を超えているのでは?
rashita.iconあと、人間を優秀な人と劣った人に二分していて、その中間にいる(多くの)ふつうの人が議論から抜け落ちている。
で、そうした人も、"いつもの「文章の書き方」に従えば文章が書ける"なんてことはない。
優秀でない人は、自分自身の限界を知らない
自信過剰に陥る。
実際にはふさわしいのに、自分は適任ではないと思うこと
rashita.iconインポスター症候群は、女性など社会的な立場が弱く、つまり周りからの評価が低い人が社会的な成功を得たときに陥る症状なのではないだろうか。学生が自分のハードルを上げ過ぎて、自信を無くすのとは文脈が違う気がするが。
洞察は簡単には生まれない
メモは意見を主張するためでなく、共有する価値のある洞察をえるためのツールである、と理解している優秀な書き手のために本書はある
rashita.iconこの段落もあまり説得的ではない印象。「困っているあなたは優秀なんですよ。私は知っています」という感情を刺激するためのセクションのように感じる。「ダニング・クルーガー効果」などのように学術的な知見が添えられているが、議論の役に立っているかは疑問。
rashita.icon優秀な人(学生)かどうかではなく、たくさんの情報があって扱いきれないと感じている人に向けた方法です、という言い方もできたはずだが、そうなっていないし、意地悪な見方をすればそうなっていないから一定の人気を得ているのだろう。
メモ術はシンプルなものがいちばん
本書の方法は、複雑なシステムを構築する必要も、手持ちの資料をすべて整理しなおす必要もない
rashita.icon言い換えれば、本書を読んで複雑なシステムを構築しようとしているのだったら方向性が間違っているということ
「賢くメモをとる」ことによって、すぐにアイデアの発展に取り掛かることができる
とは言え、ただメモをとるだけの行為でも一筋縄ではいかない。以下のように次第に難しいことをしなければならなくなる
読んだ内容を記録する
メモを整理する
思考を発展させようとする
メモで重要なのは、思考を集めるだけでなく、互いに結びつけて新しいアイデアを思いつくきっかけにすること
たいていの人がやろうとすること
手持ちの資料を小さな山やフォルダーごとにわけようとする
メモをトピックとサブトピックに分けると一見すると単純になるが、あっという間に増えて複雑になってわかりにくくなる
しかも、メモ同士のつながりを見つけられる可能性が減る
人の日常はそんなに混乱もしていないし、次々に要素が増えることもないし、メモがつながったら嬉しいということも少ない
だから成立する
rashita.iconこの段階で、「情報整理」のやり方も、扱う情報や目的によって適切なアプローチが異なる、ということが見えてくる。
使いやすさを求めて、有用性が減少する結果になる
複雑なものに対処する最善の方法
できるだけシンプルにする
いくつかの基本的なルールに従う
構造をシンプルにすることで、内容そのものを複雑にすることができる
rashita.iconこれは何を意味しているのか。
構造の取り扱いに認知リソースを振り分けないで済む分、内容についてそれをより多く振り分けることができる、ということだろうか。
豊富な実証研究と論理的研究が揃っているとのこと
sull and Eisenhardt,2015 参照とのこと
賢いメモのとり方は、極めればとてもシンプルになる
rashita.icon逆に言えば、極めないうちはシンプルにはできない、ということ。
誰でも簡単にできる、という前提は成立していない
賢いメモをとりはじめるための時間と労力について
読み方、メモのとり方、書き方を大幅に変えるにもかかwらず、準備期間はほとんどいらない
デジタルツールの場合は環境のセットアップにいくらか手間はかかる
これまでやってきたことをやりなおすのではなく、これからのやり方を変える
rashita.iconたしかにルーマンのカードシステムは第一期と第二期があり、「やりなおした」わけではない。
「いまあるものを整理しなおす必要はない」
rashita.iconその根拠は何だろうか。それとも単に姿勢の問題ということだろうか。
新しいメモのとり方を習慣にしよう
新しい技術を一からつくりなおす必要はない
rashita.icon一からつくりなおす?
一からつくりあげる、ではなく?
There is more good news. There is no need to reinvent the wheel.
実証済みのふたつの方法を組み合わせる
We only need to combine two well-known and proven ideas.
rashita.icon「well-known」はよく知られた、周知の、著名なという意味で「実証済み」とは言えないだろう
よく知られているだけで実証済みを意味するなら、陰謀論が正しいことになってしまう
「proven」を読み落としていた
rashita.icon「idea」が「方法」と訳されている。
一つ目は「ツェッテルカステン」でこちらが本書のメインテーマ
「世界中でよく知られている情報収集メモの取り方の方法」のこと、とある
The first idea lies at the heart of this book and is the technique of the simple slip-box. I will explain the principle of this system in the next chapter and show how it can be implemented in the everyday routines of students, academics or nonfiction writers. Thankfully, there are digital versions for all major operating systems available, but if you prefer, you can also use pen and paper. In terms of productivity and ease, you will still easily surpass those who are taking not-so-smart notes.
「the technique of the simple slip-box.」とはあるが、「世界中でよく知られている情報収集メモの取り方の方法」の部分は見当たらない。
情報カードを使う方法はたしかに多くの人が実践しているが、ルーマンの「ツェッテルカステン」はそこまで世界中で良く知られていると言えるか?
「the everyday routines of students, academics or nonfiction writer」あたりの訳がまるっと抜け落ちている
デジタルツールもあるし、望むなら紙とペンでもいい。
二つ目は、何だろうか
習慣の話がされているのはわかるが、どれが重要な「アイデア」なのだろうか。
Even the best tool will not improve your productivity considerably if you don’t change your daily routines the tool is embedded in, just as the fastest car won’t help you much if you don’t have proper roads to drive it on. Like every change in behaviour, a change in working habits means going through a phase where you are drawn back to your old ways. The new way of working might feel artificial at first and not necessarily like what you intuitively would do. That is normal. But as soon as you get used to taking smart notes, it will feel so much more natural that you will wonder how you were ever able to get anything done before. Routines require simple, repeatable tasks that can become automatic and fit together seamlessly (cf. Mata, Todd, and Lippke, 2010). Only when all the related work becomes part of an overarching and interlocked process, where all bottlenecks are removed, can significant change take place (which is why none of the typical “10 mind-blowing tools to improve your productivity” tips you can find all over the internet will ever be of much help).
候補
すぐれたツールを使っても、ツールを組み込む日課を変えなければ、生産性が大きく上がることはない
メモの習慣を変えるには、いままでの方法に戻りたくなる段階を乗り越えなければならない
ルーチンには、無意識に行うことができて、なおかつ、いままでの習慣に自然とかみ合う、シンプルで繰り返し可能なタスクが必要
rashita.iconどれも認知科学的に正しい話だろう。
rashita.icon著者の意図を汲み取って理解すれば、ツェッテルカステンと習慣化技法を組み合わせる、ということだろうか。
TsutomuZ.icon 私は以下をふたつ目のアイデアとしました。
たとえ最もすぐれたツールを使っても、そのツールを組み込む日課を変えなければ、生産性が大きく上がることはありません。
文章を完成させるために必要な「タスク」をあらかじめ出すのは不可能
洞察に満ちた文章や論文を書くとき
構成する作業は以下の二種
わざわざ挙げるには小さ過ぎる行動
一気に終わらせるには壮大な作業
どの手順から先に手を付けるべきかを予測するのも困難
実際に作業に着手してから、別の作業に移動することも必要
細かいタスクまで管理しても意味がない
rashita.iconなぜ、意味がないのか?
目標を大きく捉えようとしても役に立たない→次の手順が「文章を書く」くらい大雑把なものになる
rashita.icon恣意的な例の挙げ方ではないだろうか。「第一章を書く」とか「第一章の第一節を書く」という設定自体は可能だろう。
以上では書くための準備としては心許ない
文章の準備のために1時間程度で済むものと、一ヶ月かかるものまでさまざまなものがあるから
rashita.icon理由になっているだろうか。うまく説明がつながっていない気がする
もう一つ大切なこと
整理をうまく行うコツは、総合的な視点にある
rashita.iconこれはまさにその通り
タスクはもれなく対応しなければならない
そうしないと、どうでもいいと思っていたタスクが緊急事態に変わって将来苦しめられることがある
書くことには、素材集めから構成まであらゆるプロセスがある
目標は、小さな手順から次の手順へとスムーズに移行できるにもかかわらず、それぞれのやるべきことを柔軟にやれるぐらい、各手順が独立していること
rashita.iconプログラミング言語におけるオブジェクトの独立性(モジュール性)を思い出させる
以上をクリアするには、書き、学び、思考するといった時間や目的に制限のないプロセスに適したメモのシステムが必要
言い換えれば、時間や目的に制限があるアウトプットには適さないシステムということだろうか。
rashita.iconこの段階で、「どうでもいいと思っていたタスクが緊急事態に変わって将来苦しめられることがある」という言い方と、「やりたくないことはやらなくていい」という「はじめに」で出てきた表現との不一致を感じる。
rashita.icon英語版では、このあたりでGTDへの言及があるが、まるっと抜け落ちている。
These are probably the reasons why GTD never really caught on in academia, although it is very successful in business and has a good reputation among the self-employed. What we can take from Allen as an important insight is that the secret to a successful organization lies in the holistic perspective. Everything needs to be taken care of, otherwise the neglected bits will nag us until the unimportant tasks become urgent. Even the best tools won’t make much of a difference if they are used in isolation. Only if they are embedded in a well-conceived working process can the tools play out their strengths. There is no point in having great tools if they don’t fit together.
When it comes to writing, everything, from research to proofreading, is closely connected. All the little steps must be linked in a way that will enable you to go seamlessly from one task to another, but still be kept separate enough to enable us to flexibly do what needs to be done in any given situation. And this is the other insight of David Allen: Only if you can trust your system, only if you really know that everything will be taken care of, will your brain let go and let you focus on the task at hand. That is why we need a note-taking system that is as comprehensive as GTD, but one that is suitable for the open-ended process of writing, learning and thinking. Enter the slip-box.
rashita.icon個人的に、このGTDとの技法の対比が非常に面白いと感じるので、それが抜けているのはかなり残念。
メモのとり方を発明して、最高の研究者になった人物の話
仕事から帰宅後、楽しみに没頭した
読書をして、哲学、組織理論、社会学への関心を満たす
興味深いことがらに出会ったり、何かを考えついたりしたら、すぐにメモを書く
現代で夜の時間に関心をおって読書をし、メモを取る人はいるけれども、ルーマンによって途方もないキャリアを送った人はほとんどいない
なぜか
ルーマンはよくある手法を試したあと、いまのメモのとり方ではどこにも到達できないと気がついた
rashita.iconこの情報のソースが知りたい
そこでメモのとり方を一新した
いつもの分類をしたり、本文にメモを追加する代わりに、すべてのメモを小さな紙に書き、隅に数字を振り、一ヶ所に集めた
それがツェッテルカステン
rashita.icon一ヶ所に、というがルーマンは複数の引き出しがついた棚に収納していたと思うが
一つの場所という意味では一ヶ所だが、この言い方だと巨大な箱の中に詰め込まれていた印象を覚える
あとルーマンはカードの使い方を大きくを変更しているはず。
ルーマンの発見
ひとつのアイデア、ひとつのメモの価値は、文脈によって決まる
その文脈は、必ずしもメモを採録した文脈とは限らない
rashita.iconまさしくその通り
そこでメモの新たな分類法を開発した
rashita.icon分類法、なわけだ。
ルーマンの探究
どのように分類すれば、ひとつのアイデアをさまざまな文脈に関連付けられるか
rashita.iconここで「文脈とは何か?」を探究する必要がありそう
一ヶ所にメモを集めるだけでは、メモの山ができておわり
しかし、ツェッテルカステンではそうではなかった
ルーマンにとって、対話のパートナー、アイデアの生成装置、生産性のエンジンとなった
思考を構造化し、発展させるのに役立った
rashita.iconこのあたりの話は、ルーマンのslip-boxの論文でも見かけた気がする
なによりも使っていて快適だった
あらゆるジャンルの、あらゆる情報を駆使した本も書ける
ルーマンはすごい量のアウトプットを残したよ、という話。
「あらゆるジャンル」はさすがに言い過ぎ
ルーマンが人生に足りなかったものは何かと聞かれたときの答え
「何かが欲しいとしたら、もっと多くの時間だね。本当にいらいらするのは、時間がないことだけだよ」
つまり、ルーマンのような高い生産性を誇っていても、「時間がない」という感覚を消すことはできない
メモの力で、大量の本を苦もなく執筆できる
ドイツの研究者ヨハネス・F・K・シュミットがルーマンのワークフローについて研究した
rashita.iconこの研究を読み解きたい
ルーマンの生産性は独自の作業テクニックによってのみ説明できると結論づけた
そのテクニックは開示されていた
ルーマン自身が「ツェッテルカステンが生産性の秘訣だ」と答えていた(らしい)
「もちろん、なんでもかんでも自分で考えているわけではないですよ。思考はおもに、ツェッテルカステンのなかで起こるんだ」
Luhmann,Baecker,and Stanizek,1987
rashita.iconこの発言は「ツェッテルカステンが生産性の秘訣だ」と答えたことの例示として適切だろうか。
「生産性」と「高い生産性」を区分けして捉える必要があるような気がする
にもかかわらず、ツェッテルカステンとその使い方に注目した人はわずかだった
天才の謙遜だと受け取っていた
rashita.icon物事を進めるプロセスに関するスキーマが誤っているということ
テクニック、ノウハウ、方法論の軽視
ルーマンの生産性の高さは注目に値するが、それ以上にこうした成果物を「ほとんど骨を折ることなく達成したように見える」という事実が著者には印象的。
rashita.iconあくまで「見える」というだけであって、本当に骨を折ることなく達成したのかは不明。
rashita.icon水面を進む鳥が、水面下で必死で足を動かしていることがあるように
ルーマン自身は「やりたくないことを無理やりあったことはない」と強調していた
「私は楽なことしかしない。何を書くかがすぐにわかるときだけ書いている。ためらうようなら、それを脇に置いて、他のことをやる」
rashita.iconこれから知的生産を始める人は、「何を書くかがすぐにわかる」ということがあるだろうか。高校生は?中学生は?
私たちは、すぐれた結果には多大な労力が必要だと思い込んでいて、仕事の習慣をちょっと変えるだけで、生産的になるだけでなく仕事がおもしろくなるということを、なかなか信じない傾向にあります。
rashita.iconライフハック界隈でよく見かける言説。
「多大な労力が必要」という認識が否定されても、労力がまったく必要ないが肯定されるわけではない。
「仕事の習慣をちょっと変える」ということが実はかなり多大な労力を必要とするという可能性が見落とされている。
毎日5分だけの運動、毎日コーヒー一杯分の節約、……。
でも、やりたくないこtをおやらなかったにもかかわらず印象深い仕事ができた、というより、やりたくないことをやらなかったからこそ印象深い仕事ができた、というほうが、ずっと筋が通っていないでしょうか。
rashita.icon筋は通っているかもしれないが、それだけで事実と認めることはできない。
とは言え、経験則から言えば「やりたいことをやる、やりたくないことを避ける」というのはある種の熱中、集中、没頭に至るための一つの方法であることは間違いない。
rashita.icon問題はやはりこれは「研究活動」に属する話しであって、これを「ビジネス書」「仕事術」として読んでしまうと、一般的な会社での「仕事」(特に日本の会社での仕事)では支障をきたしてしまうだろう。
文脈をきちんと限定することが必要なのに、本書ではそれが意図的に外されている印象を受ける
大変な勉強や仕事でさえも、自分の内から発したゴールと方向性が揃っていて、コントロールできていると感じられていれば、楽しくなります。
rashita.iconまさにその通り。ライフハックの中心的な考え方。シゴタノ!のコンセプトにも通じる。
rashita.icon事実としてコントロールできているかよりも、「コントロールできていると感じられる」というコントロール感があることが大切という指摘は踏まえておきたい。
rashita.iconあと、「自分の内から発したゴールと方向性が揃っている」という観点も重要。これはマネジメントに必要な視点。単に「自分がやりたいことをやる」ではない。「自分がやりたいこと」は刺激と共に揺れていくものなので、ただそれに従っているだけだと、むしろコントロール感が損なわれてしまう。中長期的に「自分のゴール」だと思えること、あるいはそれにつながっていると感じることが、広い意味での「研究活動」には必要となる。
ツェッテルカステンは、刻々と変わる「自分が興味のあるテーマ」にも対応する
状況が変わったときに対応できるかどうか
融通のきかない形で仕事を組み立てたら問題が生じる
執筆の内容をコントロールするには、最初に思いついたアイデアで自分を縛らないようにすること
rashita.icon論文の書き方の本でもよく言われている話
執筆中の時間や目的を限定しないほうがいい
rashita.iconはたしてこれはどうだろうか?
洞察が必要な文章だと、執筆中に問いが変わってくる
rashita.iconまさに。
必要な資料が想像と違う場合もある
新たなアイデアが浮かんできて仕事への視点全体が変わる場合もある
上記のような小規模ながら絶えず発生する事態に対応して調整できるようにしておくこと
そうすれば「興味、モチベーション、仕事の方向性をすべて一致させておくことができる」
rashita.iconかなり飛躍が感じられる
それができれば「まったく、あるいはほとんど労力が必要ない仕事になる」
rashita.iconなぜこうして誇張した言い方をするのだろうか。
「調整のための労力は必要ない」だったらわかる。
実際は、洞察を踏まえながら文章を書いていくことは間違いなく労力が必要
労力の定義が曖昧で、嫌なことを我慢しながらやる、という意味であればまだ現実的だけども、実際はそこまで単純でもないだろう
ルーマンは、プロセスの目の前にある大切なことに集中し、中断した場合でも、その場から再開してコントロールできた
メモの構造がそれを許容していたから
rashita.icon特に説得的ではない説明
単に書くことをしながら考えていたからだろう
成功は強い意志力と抵抗に打ち克つ力の産物ではなく、最初から抵抗を発生させない賢い仕事環境の成果
Neal et al., 2012 Painter et が参考文献
抵抗と正面から戦うのではなく、むしろ抵抗を逸らす戦略をとる
適切なマインドセットだけであく、適切なワークフローの構築が大切
ルーマンはツェッテルカステンを使うことで、「さまざまなタスクと思考レベルを自由かつ柔軟に切り替えることができた」
ルーマンのやり方の鍵は、適切なツールを持つことと、その適切な使い方の両方ができること
rashita.iconというよりも、あらゆるノウハウは適切なツールと、それをどう使うのかの運用が欠かせないだろう。
もちろん、学問の世界でもビジネスの世界でも、賢くなければ成功できません。
rashita.iconIQは関係ないというような話を前に出しておいて、この話題はどうなのだろうか。
高いIQがあったとしても、適切な方法がなければうまくいかない、ということが言いたいのだろうけども
なぜ公開されているツェッテルカステンという技法が使われないのか
難し過ぎるからではない→驚くほどシンプルである
rashita.icon「難しい」ではなく「複雑」だろう。あるいは「理解するのが難しい」と表現した方がいいと思う
著者が考える理由
ツェッテルカステンのみに注目してワークフローを無視したから
rashita.icon無視するというのは、実際的にはどういう状況を指すのだろうか
あるいは、無視しないというのはどういう状況を指すのだろうか
ツェッテルカステンの刊行物はほぼ英語版で、議論の大半が社会システム論を専門とする社会学者のサークルに閉じていた
ツェッテルカステンのシンプルさ
人はシンプルなアイデアから、大きな成果を期待しない(特に学術的な根拠はない)
もっとも重要だと述べられている
ヘンリーフォードの方式の優れた点、革命性は最初は理解されなかった(根拠としては弱い)
さあ、メモを始めよう!
ざっとした、ツェッテルカステンの説明
ルーマンが使ったツェッテルカステン
詳しい方法、デジタルの方法は次の章以降に
ルーマンは2種類の箱を使い分けていた
メイン・ツェッテルカステン
補助的な文献管理用
参考文献
その内容に関するメモ
どちらの箱に入るメモも、インデックスカードに書き、箱に保存していた
ツェッテルカステン=上記の箱と、メモ
ルーマンの読書メモスタイル
書誌情報をカードの片面に書き、もう片側に自分のメモを書いていた
短く書くことが大切(Schimidt 2013 より)
これらのメモは、「ゆくゆく」は文献管理用の箱に収まる
その後、メインの箱を使う
まず、文献管理用のメモに入るメモや、その他にとった走り書きのメモを見直す
rashita.icon「入るメモ」という表現が、入っているメモのことなのか、入りそうになっている(まだ入っていない)メモのことなのかが読み取りにくい。
In a second step, shortly after, he would look at his brief notes and think about their relevance for his own thinking and writing. He then would turn to the main slip-box and write his ideas, comments and thoughts on new pieces of the kind of critical mass that would draw much attention.
rashita.icon説明がかなり違っている。
ツェッテルカステンに入れるメモを書くときのコツは、すでにあるメモと、この新しいメモにどのような関連性があるのかを考えることです。
この説明だと主従が逆に捉えられるのではないか。
最初に既存の「thinking and writing.」について考え、考えた結果を書き留める。
コツというと書くことが先にあって、それをうまくやるために関連を考えるという風に捉えられないか
一枚のアイデアには一枚の紙を使う
He then would turn to the main slip-box and write his ideas, comments and thoughts on new pieces of paper, using only one for each idea and restricting himself to one side of the paper, to make it easier to read them later without having to take them out of the box. He kept them usually brief enough to make one idea fit on a single sheet, but would sometimes add another note to extend a thought.
たいていの場合、新しいメモは前のメモに直接続き、連続した長いメモの一部になる
He usually wrote his notes with an eye towards already existing notes in the slip-box. And while the notes on the literature were brief, he wrote them with great care, not much different from his style in the final manuscript: in full sentences and with explicit references to the literature from which he drew his material.
rashita.iconこの部分が抜けている
そしてむちゃくちゃ重要。
彼は最新の注意を払って書いていて、最終的な原稿のスタイルと大差なかった
そのようにして書けば、たしかにそれらを並べて原稿を構成することができるだろう。
明らかに「簡単にメモを書いたら、ラクチンでアウトプットできる」というのは異なっている。
むしろルーマンは、すでにこの小さなカードで「原稿」を書いていた。
rashita.icon梅棹忠夫が豆論文と呼んだものとまったく同じ。 この言及を抜いてカード法を論じても中途半端なものにしかならないだろう。
単に読める文章ではなく、「原稿」として完全なスタイルで書かないといけない。
More often than not, a new note would directly follow up on another note and would become part of a longer chain of notes. He then would add references to notes somewhere else in the slip-box, some of them which were located nearby, others in completely different areas and contexts. Some were directly related and read more like comments, others contained not-so-obvious connections. Rarely would a note stay in isolation.
「メモに番号を振る」ことでアイデア同士がつながる
ルーマンは、ただ書き写すのではなく、「一つの文脈から、別の文脈に移し替える」ようにしていた
できるだけ原文の意味を維持しつつ、自分自身の言葉を選んで書くという作業
自分の状況や文脈に合った内容に生まれ変わる
rashita.iconこれは、社会学というアプローチに適用できる方法なのか、学問全般、たとえば文学研究にも適用できる広いアプローチなのか
ただ引用するよりも、「消化して自分のもの」にした方がメモとしては価値が高い
よくあるメモのとり方は、トピック別に整理することだが、ツェッテルカステンはそれをせず固有の番号を振る
rashita.icon固有の番号を振っていることとトピック別の整理は相反するものだろうか
ルーマンはいくつかのカテゴリを持っていたように思うが、それは「トピック別の整理」とは異なるのだろうか
「番号には意味がなく」識別するためだけに振られている。
rashita.icon本当に? とういか「意味がない」というのはここでは何を意味するのか
既存のメモが「22」なら、関連すると思ったメモは「23」になる
rashita.iconこの時点で、23は、22に関連する(近しい位置にある)という「意味」を持っているのではないか
任意のUUIDを割り振るのとは大きく異なる気がする
すでに「23」がある場合は、「22a」と枝番を振る rashita.iconルーマンの特筆すべき着眼点はこのIDの振り方を発明したことにあるといっていいくらい優れたやり方
メモを追加するたびに、関連するメモを探して、つながりをつくっていた
rashita.iconこれも何を意味しているのかが取りにくい
上記のような後ろに接続することだけを意味しているのか、それともインデックスとなるカードを作っていることを意味しているのか
次の段落で「メモの後ろにメモを直接追加するのは、ひとつのやり方にすぎない」という言い方があるので、後者も含む表現だろうと推測する
メモ同士にリンクをはる
これはインターネットのハイパーリンクを使う方法に似ている
rashita.icon固有のID(WebならURL)を与えることで、リンクが可能になる。
同じことは綴じノートにノンブルを振ることでも可能になる
それ自体は別に特筆すべきことでもなんでもない
メモ同士にリンクを貼ることが画期的
ルーマンはメモの間にリンクをつけたことで、同じメモを別の文脈で使えるようにした
フォルダごとにしてしまうと、保存した時点でトピックの順序が決まってしまう
ツェッテルカステンでは、リンクを貼ってメモを自由に置くことで、あらゆるテーマを発展させることができる
rashita.iconリンクを貼るにしても、物理的な紙であるカードは、必ずどこかの位置に置かれることになり、それはナンバリングの位置になるだろう。だとしたら、フォルダごとにしまっておくのと大差ない
rashita.iconたとえば、Workflowyの場合トピックで分類してもミラーコピーを使うことでまったく同じ運用ができる。
rashita.icon著者はもうこの時点で、デジタルツールでの運用を念頭に置いた説明をしている
rashita.iconルーマンの方法の白眉は、それぞれのカードを一つの流れに置きながらも、別の流れにも乗せられるという点で、それはフォルダを使っていても、リンクができればネットワークが作れるということで、フォルダを議論から排除すること自体、ズレているだろう。
執筆の段階になれば、関連するメモ同士を並び替えて整理して、それがそのまま文章全体の構成になる
索引の重要性
索引とは?
メモが迷子にならないためのもので、それ自体が独立したメモとして作る
メモの中からキーワードを選び、索引にする
具体的な作り方は後の章で
この索引があれば、ひとつかふたつのメモを参照すれば、それを起点に「一連の思考やトピック」を追いかけることが可能になる
メモはつながっているので、起点のメモがあれば芋づるにたどっていける
方法は以上
ソフトウェアの助力もある
+αで「プロジェクトのメモ」もある
仕組みがわかったら、あとは自分のワークフローに組み込むだけ
そのためには、「私たちがどのように考え、学び、アイデアを発展させるのか」を理解すること
rashita.icon次章の話題が振られている?
一言でまとめるなら「私たちは、脳の制約を補うために、思考するための信頼性が高くシンプルな外部構造が必要」
次の章では「ツェッテルカステンを使って文章を書くプロセス」を説明する、と宣言
rashita.icon話の順序がややこしい
まとめ記事